第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】
不死川は少し間を置き、ふと背伸びをするように刀を握り直した。
「……まずは、己の体と心を鍛えろ。強ぇ奴しか、人は守れねぇ。」
その声には、厳しさと同時に、真摯な導きが込められていた。胸が熱くなる。私は強くうなずき、彼の言葉を胸に刻む。
夕暮れ時、彼はふと立ち上がった。
「……夕餉前に、ちょっと鍛練してくる。…お前も来るか?」
荒々しい誘いに、私は驚いたが、迷わず答えた。
「はい!」
その答えに、彼は小さく舌打ちをしたが、どこか嬉しそうな気配を漂わせた。
鍛練場で、風の呼吸の一撃を見せる彼の姿は、光の中で神々しいほど輝いていた。私は手元の刀で彼の動きを真似る。呼吸を合わせ、動きを覚えるうちに、身体と心が少しずつ研ぎ澄まされていく。彼の隣で学ぶ時間は、ただの稽古ではない。彼と心を通わせる瞬間でもあった。
「……お前、少しは成長したかもな。」
夕日の逆光に、彼の影が長く伸びる。私は息を切らしながらも、笑顔で答えた。
「はい……あなたのおかげです!」
その一言に、彼は一瞬だけ目を細め、微かに頬を緩ませた。荒々しい言葉の裏に、確かな信頼と温もりがあることを、私は感じた。
夜、部屋に戻ると、私は布団に横たわりながら、今日の出来事を反芻する。心の奥で、誰かを守る力を身につけたい――その決意と、彼への想いが、静かに芽生えていた。