第13章 気まぐれ【不死川編 第1話】
日ごとに、傷は癒えていく。
しかし、心の奥に残る孤独や喪失感は、そう簡単には消えないけれど不死川が来てくれるだけて私の心は少しだけ晴れ間が見えた。
朝の光が差し込む蝶屋敷の部屋で、私は静かに日輪刀の手入れをしていた。手元の刀身を撫でながら、あの日の出来事がふと頭をよぎる。両親の笑顔、そして目の前で散った惨劇。胸の奥で何かが震え、思わず息を詰めた。
その時、扉が音もなく開いた。
黒い影が入ってきて、柔らかな光の中で彼の輪郭が浮かぶ。
……不死川。朝の光に照らされる彼の表情は、普段の怒りに満ちたものとは違う、静かな決意が漂っている。
「……もう起きてたか」
低く呟くその声に、私は思わず顔を赤らめた。
「はい……」短く返すだけで精一杯だったが、彼は刀の手入れを続ける私の隣に腰を下ろした。
静寂が二人を包む。言葉は少ないけれど、存在感だけで互いを感じられる。この時間は、戦いとは違う、心が安らぐ特別な空間だった。私は思い切って、ゆっくりと声を漏らす。
「……不死川さん……」
彼は顔を少し傾け、私を見下ろした。その視線は冷たさの裏に、ほんのわずかな優しさを含んでいるのを私は知っている。
「……どうした?」
少し荒々しい声。でも、問いかけには確かな関心があった。私は目を伏せ、手元の刀に視線を落とす。
「……私は……もっと強くなりたいです。あなたのように……誰かを守れる人になりたい。」
心の奥からの告白に、彼は一瞬黙った。黒い瞳に、何かが揺れる。
「……お前、ほんと変な奴だな。」
いつもの冷たい口調だが、微かに笑みを含んでいる。私は小さく息をつき、刀に手を添えた。
「……でも、教えてください……」
勇気を振り絞るように、私は続ける。
「どうすれば、誰かを守れるのか……」