第12章 紅色の瞳の先【煉獄編 第1話】
累が蜘蛛の糸で前方から突進してきた瞬間、知令は愛の呼吸・伍ノ型を応用しつつ、炎の呼吸の間合い理論を取り入れた連続斬撃を放つ。刃が鬼の糸を断ち、身体に微細な振動を伝え、敵の動きを封じる。その間に義勇が横から突き、累の不意を突いて一撃を与える。
戦闘は苛烈を極め、知令の目の前に累の本体が現れた。彼女の胸を締め付けるのは両親の死の記憶と、鬼を前にした憎悪。だがその怒りは刀に変わり、愛の呼吸と炎の呼吸の融合技として現れる。思考と感情が一体となり、知令は己の力を完全にコントロールできてはいないが、共に戦うことで自然と戦略的な行動が可能になっている。
「知令、ここだ!」
義勇が合図を送り、彼女はその指示を直感的に理解する。二人の呼吸と動きが重なり、累は一瞬の隙をさらされる。火のような熱を帯びた刃と水のように流れる動きが交錯し、森に鮮烈な光景が生まれた。
──戦闘の激化の中、知令はただ戦うだけでなく、心の中で煉獄の教えを反芻し、義勇との絆を確かめながら、愛の呼吸の新たな型を生み出していった。