第12章 紅色の瞳の先【煉獄編 第1話】
黄昏の光が庭を染める頃、知令の体は疲労で震えていた。しかし、心はかつてないほどに研ぎ澄まされ、刀と呼吸が一体となる感覚をつかみつつあった。煉獄は汗に濡れた髪を額から払い、やさしく微笑む。
「よくやったな、愛染少女!お前の成長が、目に見えるようだ。」
その言葉に、知令の胸は熱くなる。体を動かすたびに義務感や焦燥で押しつぶされそうだった日々を思い出すが、煉獄の励ましにより、力強く前を向ける自分を感じる。
「煉獄さん……ありがとうございます。」
少し震える声で告げると、煉獄は無言で頷き、手を差し伸べた。自然とその手を取り、握る瞬間に心が跳ねる。指先を通じて伝わる温かさが、戦場で感じた孤独と恐怖を一瞬で溶かしていくようだった。
「お前が強くなること。それが誰よりも俺達を安心させるんだ。剣士の力は、心で動かす。恐怖に負けず、己を信じろ。」
煉獄の言葉には、ただの指導者としてではなく、守りたいという感情がにじむ。知令は胸の奥で、守られることの心地よさと、自分も誰かを守れる強さを得たいという想いが交錯し、刀を握る手に力が宿る。