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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第12章 紅色の瞳の先【煉獄編 第1話】


指先に触れる温かさは、戦場で見せる冷徹な剣士の印象、この間の基礎体力をつけるような地獄の特訓とはまるで違い、知令の胸を微かに震わせた。

「腕の力だけで振るな。心と体を一体にして刀に意志を乗せろ」

声のトーンに従い、知令は深く息を吸い、振り下ろす。最初はぎこちなかった体の動きも、煉獄の的確な指導で少しずつ自然になり、刀と呼吸が調和していく感覚を覚える。汗が頬を伝い、髪の束が額に張り付くが、疲労感よりも達成感の方が勝った。

稽古の合間、煉獄は笑みを浮かべて彼女の肩に手を置いた。

「無理に元気を出す必要はない。泣きたいときは泣いても構わない。」

その言葉は、戦闘では見せない柔らかさに満ちていた。知令は少し顔を赤らめ、息を呑む。涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら、胸の奥で小さな温かさが広がるのを感じた。

「ありがとう…ございます。」
「安心しろ!泣いても、少ししたら稽古はどんどん続けるからな!」
「は、はい…!」

刀を握る手を休め、庭の木々を見つめる。風が枝葉を揺らし、柔らかな光が差すその光景に、心が少し軽くなるのを覚える。煉獄は無言で傍に立ち、穏やかな空気を作ってくれる。戦闘での暴走と狂気を経験した知令の心に、初めて安心できる時間が流れ始めたのだった。
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