第12章 紅色の瞳の先【煉獄編 第1話】
蝶屋敷の窓から差し込む朝の光が、白い布団の上で横たわる知令の長い髪を優しく照らしていた。親を失った悲しみはまだ胸に重くのしかかるが、療養を経て少しずつ体を動かせるようになっていた。煉獄杏寿郎は、そんな彼女のそばに静かに立ち、今日も稽古の準備を整えている。
「まずは基本の型だ。お前は愛の呼吸を持っているが、基本の呼吸もしっかりと習得しないといけない。前回俺と特訓したときのことを覚えているか?」
「はい。あれから随分と動けるようにはなったし、刀も上手く扱えるようにはなりました。」
「うむ。確かに。ただ、愛の呼吸ばかりを磨いても限界がある。ましてやお前の呼吸は甘露寺の恋の呼吸から生まれたものだ。恋の呼吸は本来火の呼吸から来ている。」
「なるほど…。じゃあつまり、」
「呼吸と体を一体にする。それを理解すれば、刀は心の延長になる。そのためにも炎の呼吸を愛染には習得してもらう!」
煉獄の声には力強さだけでなく、温かみがあった。知令は小さくうなずき、緊張で硬くなった肩をほぐしながら刀を握る。刀の重みを感じ、手首や腕だけでなく体全体の動きに意識を集中する。煉獄はそっと手を添え、力の乗せ方や角度を丁寧に教えてくれる。