第12章 紅色の瞳の先【煉獄編 第1話】
日が差し込む蝶屋敷の窓辺で、知令は布団に体を横たえたまま、じっと外を眺めていた。庭先に咲く花の色に、心がかすかに揺れる。しかし胸の奥には、両親を失った痛みと、自分の中で暴走した力の残響が、まだくすぶっている。
「……まだ、思い出すだけで……胸が痛む。」
小さな声が室内に響く。手元の布団を握る指先は、微かに震えていた。
そのとき、扉が静かに開き、煉獄が入ってきた。今日も彼は、鮮やかな袴姿、柔らかい表情で、彼女のそばに座る。
「愛染少女。調子はどうだ?」
「まぁ…はい、元気です。」
「……無理に元気になろうとする必要はない。泣きたいときは泣けばいい。本当は?」
「…無理してます。」
「うむ。それが普通だ。」
その言葉には、炎柱としての熱量だけでなく、深い優しさが滲む。知令は顔を少し赤らめながら、声を震わせた。
「……でも、私は……どうしても……」
煉獄はその続きを促すように、手をそっと伸ばした。彼女の小さな手を包み込む温かさに、知令の心はぎゅっと揺れる。火傷するような熱ではなく、心を守ってくれる安心感だった。
「……私、あの時……自分でも怖くなるくらいに……刀を振るってしまったんです」
戦闘で暴走した自分の力を、まだ理解できないまま話す知令。
煉獄は静かに頷く。