• テキストサイズ

【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


「僕は累。…家族が欲しいんだ。僕には、それが必要なんだ。」

累の声は、驚くほど幼く、かすかな甘さを含んでいた。
だが、その言葉の裏に潜むものは、血のように冷たい。

「……家族?」

思わず私は呟いてしまった。

“家族”という響きが胸を突き刺した瞬間──
焼け落ちる家、流れた血の匂い、伸ばしたはずの手の感触。
脳裏に、あの日の光景が鮮烈に蘇る。

動揺を押し隠そうと、唇を噛んだ。
だが、累はまるで私の心の奥を覗き込むように、薄く笑った。

「……君も、家族を失ったんだろう?」

ぞっとした。
どうして知っているのか。
言葉を返そうとしたのに、喉が張りついて声が出なかった。

「だからわかるはずだ。僕が求めているものが、どれほど大切か」

累の声音は静かだった。
だがその奥には、狂気じみた執着が滲んでいた。
彼の口から語られる“家族”は、絆ではなく、鎖だった。

「本物の絆なんて、脆いものだよ。血で繋がっているはずなのに、簡単に壊れる。
だから僕が作る。僕が支配して、僕が守るんだ。そうすれば……絶対に離れない。」

その瞬間、私の中でなにかが軋む音がした。

(違う……それは“家族”なんかじゃない……!)

心の奥で否定の叫びが響いたのに、身体は凍りついたまま動けなかった。
それほどまでに、累の言葉は私の“喪失”を抉っていた。
/ 179ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp