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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


森の空気は更に張り詰めていた。
血の匂いと、湿った土の匂いが混ざり合い、わずかな風さえもどこか重く淀んでいる。

蜘蛛の鬼たちとの戦いを越えた直後、足元の草が微かに震えた。
義勇の隣を歩いていた私の耳に、「張り詰めた弦を弾くような音」が届いたのだ。

ピン、と。
まるで目に見えぬ弦が張り巡らされ、空間そのものが締め付けられる感覚。

そのとき。

「──ようやく来たんだね。」

森の奥、月光を浴びた細い道の向こうに、その少年は立っていた。

雪のように白い肌。
蜘蛛の糸を編んだかのように整った黒髪。
紅く滲む瞳は、焔ではなく氷のように冷ややかで、それでいて心の奥を刺すように鋭い。

その存在感は、ただの“鬼”という枠には収まりきらなかった。
凍りつくほどの美しさと、胸の奥をざわめかせる異様さが同居している。

「……あれは。」

義勇の声は低く抑えられていた。

彼の声を瞬間、何故か背筋がぞくりとした。
音もなく立つその姿に、無意識に一歩後退ってしまう。

下弦の鬼は、じっとこちらを見据えていた。
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