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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


森の奥は、さらに濃く重たい闇に包まれていた。蜘蛛の巣が木々に幾重にも絡みつき、湿った土の匂いと鉄錆のような血の臭気が鼻を刺す。肌を撫でる風でさえざらついて感じるのは、漂う鬼の気配のせいだろう。

隣を歩く義勇の気配は、そんな不気味さを押し流すように研ぎ澄まされている。横顔は微動だにせず、ただ前を見据えていた。

「……義勇さん。」

思わず声をかけた。心臓が速く打つ。恐怖と、彼の存在の確かさがないまぜになって胸を揺らしていた。

「離れるな。」

短い言葉。だが、低く落ち着いた声が耳に響くだけで、足が再び前へと進む。

───その瞬間、木々の上から糸が雨のように降り注いだ。

「っ!」

とっさに体を捻ったが、一筋が腕に絡みつく。瞬く間に締め上げられ、体が引き上げられそうになった。

「危ない!」

息をのんだ刹那、水刃が閃いた。義勇の太刀筋が糸を断ち切り、私は地面に投げ出された。

「…大丈夫か。」

差し伸べられた手が、容赦ない戦場の中で不思議なほど温かかった。指先を掴むと、その力強さが掌に伝わる。

「はい……!」

震える声で答えると、彼は一瞬こちらを見て、すぐに前へ向き直った。

───それでも、目を合わせた一瞬に心が熱を帯びた。

森の奥では、炭治郎の声が響いた。

「禰豆子!下がるんだ!」

駆けつけると、炭治郎は糸に囚われ、必死に刀を振るっていた。善逸も伊之助も、それぞれの相手に苦戦している。蜘蛛の鬼一家は一体ごとに異様な力を誇り、まるで巣の中に足を踏み入れた獲物のように追い詰められていく。

義勇はすぐさま炭治郎のもとへ走り出した。私はその背を追う。

だが、その一瞬の隙をついて、蜘蛛の鬼の糸が背後から私の体を捕らえた。両腕を引き裂くように縛られ、木の枝に吊り上げられていく。

「───ぁっ!」

声にならぬ叫びが漏れた。
…技を出さなければ。しかし、体が宙に浮き、胸を圧迫され、呼吸が苦しくなる。

鬼が嘲るように笑った。

「人間は脆いなァ。いいなァ、苦しむ顔。もっと見せろ。」

糸が食い込み、皮膚を裂いていく。
考えろ。頭をフル回転させて、痛みを力に変えろ。

血が滲み、視界が滲んだ。

あ、やばい。───死ぬ。
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