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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


「おーい! そこの人たち!」

木立の向こうから聞こえた声に振り向くと、炭治郎と善逸、そして伊之助が姿を現した。泥と血にまみれた姿で、それでも瞳は折れていない。

「炭治郎さん!」
思わず声を上げる。少年の表情が安堵にゆるみ、こちらに駆け寄ってきた。

「良かった……!お久しぶりです。無事だったんですね!」
「うん。色々とありがとうございます!」

互いの再会も束の間、山の奥からは怨嗟にも似た悲鳴が響き渡る。糸に操られる隊士たちが次々に現れ、異様な光景を織り成す。蜘蛛の糸がまるで生き物のように蠢き、戦況を飲み込んでいく。

義勇はすぐに状況を見定め、短く告げた。

「炭治郎、お前たちは前へ進め。ここは俺が引き受ける。」

その声に胸が高鳴った。──義勇は、いつだって前を見ている。誰よりも冷静で、強くて、頼もしい。だが、そんな彼の隣に居られる自分は、ただ守られるだけの存在でいいのだろうか。

答えを出す間もなく、鬼の糸がこちらに襲い掛かってきた。

「っ……!」

刀を抜いて応戦しようとしたが、糸の力は重く、身体ごと引きずられる。背後に広がる闇へと、引きずり込まれる感覚。視界が反転し、地面が迫る。

──その刹那。

「危ない!」

強い腕が背を支えた。冷たい夜気の中で、その腕だけが確かに熱を宿している。義勇が抱きとめてくれていた。

「無茶をするな」

耳元で低く響く声。その真剣な眼差しに射抜かれ、心臓が強く跳ねた。息が詰まり、言葉が出てこない。

「……すみませんっ!」

 震える声でやっとそれだけを返すと、義勇はふっと視線を逸らした。だが彼の手は、なおもしっかりと自分の腕を握ったままだった。

体温が伝わる。脈動が伝わる。息を呑む距離で、互いの存在が鮮やかに意識される。

──その瞬間、胸の奥で芽生えた淡い想いが、揺らぎではなく確かなものへと変わっていくのを感じていた。
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