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【鬼滅の刃】屋烏の愛

第11章 生きるために剣を振れ 【冨岡編 第1話】


奥に進むと、背筋を這うように忍び寄る悪寒が走った。木々のざわめきは、風ではなく、何かが蠢く音だった。白く細い糸が、闇の中を蜘蛛の巣のように張り巡らされている。

目に映るのは、仲間であるはずの隊士の骸のような姿。四肢を不自然に折り曲げ、操り人形のように迫ってくる。

「っ……!」

刀を構える腕が震えた。目の前の相手は鬼ではない、同じ人のはずなのに。だが斬らなければ、こちらが斬られる。

ためらう私の前に、一陣の風。
鋭い音と共に、迫りくる糸が一瞬で断ち切られた。

「下がれ。」

背後から届いた低い声に、胸が跳ねた。振り向けば、冨岡義勇が月明かりを背負って立っていた。冷徹な眼差し、流れるような剣筋。その姿に思わず息を呑む。

「義勇さん……!」
「迷うな。今は、斬らなければ死ぬ。」

 冷たいはずの声が、不思議と支えになる。刀を握り直し、私は頷いた。
「愛の呼吸…壱ノ型、鴻雁愛力!」

敵の動きを分析し、安全な場所から、私は操られた隊士の剣を弾いていく。

そして二人並んで駆け抜ける。義勇が糸を断ち切り、私はその隙に迫る隊士の剣をどんどん弾いていく。背中合わせに立つと、互いの息遣いまでが鮮明に伝わってきた。

「怖いか?」

 戦闘の最中、不意に囁かれた言葉に一瞬気を取られる。喉がからからに渇いているのに、答えを出そうとして声が震えた。

「……怖いです。でも鬼は絶対許さない。地獄の果てでも追い詰めます。…それに…。」

「あなたがいるなら…怖くない。」

 その瞬間、義勇の目がわずかに揺れた。普段、氷のように冷たい瞳の奥に、一瞬の温度が灯った気がした。

「……なら、俺が守る。」

短い言葉に胸が熱くなる。鬼の影が迫り来ても、刀を振るう足はもう迷わなかった。
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