第2章 夢魔と少女の話【R18】
「どうだ?これでわかっただろう」
絵画の女性よりも美しい白い肌と、黒とも紫とも言えるような艶やかな長い髪。尖った耳に赤い瞳。袈裟のような白い衣装がベッドに滑り落ちて素肌が顕になる。耳にかけている長い髪がひと房、私の顔の横に落ちた。
男は私の頬の感触を楽しむように指を滑らせると満足気に微笑む。
魔物…いや、悪魔?とにかく人ならざる者だということはわかる。でも私は人型の生き物といえば人間以外に見たことがなかった。この夢の中でも。
思わず見とれるほどの美しさに恐怖を忘れかけたのも束の間。組み敷かれているという状況を理解し顔から血の気が引く。何をされるのか、殺されるかもしれない。震えを抑えるために唇を噛んだ。
男は私の様子に眉を顰めたようだった。噛んだ唇から血の味がする。男の顔が近づき、もう終わりだと目を瞑った。
しかし、次にやってきたのは唇に当たる柔らかい感触。一体何をされているのか理解できないまま硬直するしかなかった。
舌で舐められる感触に全身がぞくりとしてやっとの思いで目を開け、男の胸板を押しのけようと暴れた。
「んっ…いや、」
必死に抵抗して口を開くと、男はそれを待っていたかのように私の口内に舌を滑り込ませた。口の中に鉄の味が広がった。
ばたつかせた手足からは徐々に力が失われ、私の意思とは関係無しに、体は揺れ小さな声が漏れる。
男が唇を離した隙に酸素を求めては短い呼吸を繰り返した。
「、お前はこの世界の人間以外ではないな」
「やっ…!やめて…あなたは何で私が見えるの。早く目覚めろわたし…!」
涙を隠すため、それからこれ以上唇を奪われないため、腕で顔を覆った。こんな悪夢は初めてだった。
不快感と嫌悪感とおかしくなる自分の気持ち悪さとがぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、嗚咽してしまいそうなほど苦しい。
男は私の言葉に一瞬驚いた表情を見せたが、それはすぐに獲物を見つけた獣の表情に変わった。