第4章 夢遊 ※高
「なんでまた彼女が踊っているんですか?」
「実家では身ぅ...嫁いで行く身内の門出に……幸せを祈って踊るんですよ」
「と、言うことは...今回の」
「壬氏様が想像したものと違うと思いますよ。この一ヶ月、うちの妹は毎日芙蓉妃のもとに通って作った薬を煎じていましたし、話を聞いたりしてました。情が移ったんですよ。あの子の良いところでもあり、悪いところでもあるんですが。」
「...そうか。」
壬氏様の深読みを秒でぶったぎる小猫の顔は終始無表情。
今のところ壬氏様を喜ばせる視線は我慢しているようだ。
そうこうしているうちに、城壁上の舞は
終わりを迎え、外に向かって深く礼をしていた。
その後、クルリと向きを変えた さんの顔は夜目に慣れたからか満月で明るかったからか、ハッキリと満面の笑みであることが分かった。壬氏様を見て思い切り顔をしかめたのも。
そして、グッと仰いで暫く動かなくなったかと思うと、おもむろに胸元から包みを取り出して口に入れた。
その様子を見ていた壬氏様が首をかしげる。
「なんだ?あれは…」
「あぁ、媚薬です。」
「「っ!?!?」」
壬氏様と2人で小猫の顔を見る。
正気か?
「何でそんな危ないもの与えたんだ…」
「落ちたりしませんかね…」
壬氏様は手で顔を覆ってしまっている。私としても前回のこの前のあの状態になると考えたら危ないと思う。
「落ちはしませんが…高順さん、呼ばれてます。」
「「……は?」」
小猫の言葉に城壁を見ると、確かに手招きしている。しかし何故姉を差し置いて…
「私ですか?」
「そうですね。ほぼ間違いないので。あ、壬氏様はここでお留守番です」
「はぁ?」
小猫の言葉に、壬氏様の不満の声が上がる。前回媚薬で酔った時も見目麗しい壬氏様には全く近づかず、何故か自分の上に乗ってきた。あまつさえ媚薬まで食べさせられ、翌朝妻に謝り倒したことになったのは記憶はまだ新しい。
城壁に届きそうな距離だが、まだ手招きされている。
まさかここを登れ…とは言わない……ですよね?