第4章 夢遊 ※高
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「ご報告があります」
真夜中だというのに、後宮で上がる報告は総じてそこに住まう女達についてだ。
計画通り行ったと思った矢先に、新しい問題は舞い込んでくるものだ…
高順は、報告に来た見張り宦官を見てため息を吐いた。
「何をやってるんだ。おまえの妹は!」
「...あ、壬氏様、高順さん。何って言われたら...踊っていますね。」
報告があった場所に向かうと、東城壁で踊る女性を発見した。
長い黒髪を体の動きに合わせて遊ばせ、報告通り踊っている。
東屋に座り、踊る女性を見ている後ろ姿には見覚えがあった。
流石というか…壬氏様はこの距離で踊っている人物を一瞬で言い当てた。
距離があるので身長も顔も判別できないし、髪型も団子ではなく完全に下ろしており雰囲気が違いすぎるのに…。
「危ないだろう!」
「待って下さい壬氏様。最後まで踊らせてやって下さい。……ところで、お二人は何故ここに?」
「変な女がまた踊っていると知らせが来たんだ。」
「それは………スミマセン。」
止めに入ろうとした壬氏様を、小猫が止めた。
以前も登っていたので、問題はないのだろうが…
以前見た芙蓉妃の幻想的な舞いとは違い、テンポが早く動きも大胆で力強い。
「変わった……舞ですね?」
「いくら練習しても、繊細で優雅な動きが出来ないので、実家の姉たちが諦めて武舞をベースにした舞を仕込んでました。」
「武舞……」
それはまた……思い切った選択をしたものだ…
「やな予感…的中…か。」
「何か言ったか?」
壬氏様が小猫の小さな独り言に気付いたが、聞き取れなかったようで声をかけたが、子猫は首を横に振って否定した。