第4章 夢遊 ※高
「よーし。完璧…」
火鉢を掻き回した手を洗い、本日の出来上がりを確認する。
我ながら上手に出来た。
翡翠宮に出仕する準備を整えて部屋を出ると、姉さんも丁度部屋を出るところだった。仲良く洗い場に向かって歩いていると小蘭に出会い、ゆっくり話をしながら歩く。噂好きの小蘭の話は、昨日下賜された芙蓉妃の事で持ちきりだ。
その中で芙蓉妃の旦那の功勲の内容の話になり、姐さんが少し考える素振りを見せたことに気づいた。
何か気になることでもあったのか…
「姐さん。何か引っ掛かることでもあった?」
小蘭とわかれてからすかさず姐さんに確認をとる。情報共有は姐さんを守る上で一番大事なポイントだ。
「あぁ、ちょっとな…」
姐さん曰く、腹黒似非天女の部屋に私が行く前に、姐さんと奴はとある話をしていた。その毒に関する豆知識的内容が今回、小蘭が興奮気味に語っていた武官の功勲
に酷似しているではないか……
確かに出来すぎている…
堅物武官の功勲…
依頼された媚薬…
幼馴染みの武官と芙蓉妃……
夢遊病の芙蓉妃…
計画されていた事だった……?
まあ、仕組まれていたということは大して問題ではない。
どうして姐さんがこの計画に介入させられたか…だ。
わざわざ姐さんの媚薬を使うほどの事じゃ……
「っ!!!」
「……どうした? 」
全ての事柄が繋がった瞬間、怒りの余り本気で総毛立った。
ザワリザワリと隠しきれない殺意が滲み出る。
あの野郎……
「姐さん……先行ってて。私、ちょっと…掃除……してこようと思う」
「待った!その掃除の対象、人間じゃないだろうな?」
口もとは笑みの形を作ってるが、目が氷点下な上に物騒な空気を放っているに流石の猫猫も顔をひきつらせた。
「人外の可能性があるから平気。腹黒だし似非だけど、人外……」
「待て!!待て待て!!」
「大丈夫。姐さんには迷惑かけないようにする。」
「そういうことじゃ…あっ!……あ~あ~……。」
足音も立てず走り去っていく姿を見て、猫猫は空を仰いだ。
全力で走っても の足の速さには敵わない……