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薬師助手の秘密【R18】

第1章 後宮下女




中央に位置する赤塗の建物…いつもの東の外れの宮とは比べ物にならない、手の込んだ作りの宮。

今回の目的地はここだ。

現在、一番大きな部屋に住んでいるのは東宮のご生母、梨花妃だ。
帝が皇后を持たない中、唯一男児を持つ彼の方が実質最高権力者だ。

近づくにつれ、甲高い女の声と狼狽える男の声が聞こえてきたので、さりげなく野次馬に混じってなかを伺う。



「おまえが悪いんだ!!自分が娘を産んだからって、男子の吾子を呪い殺す気だろうっ !!!」


罵る女は後宮の最高権力者

うつむく女はそれに次ぐ妃

狼狽える侍女たち

仲裁に入る医師



「わぁ…地獄絵図…美人が怒ると怖いねぇ…それに………ねぇ?姐さん…」
「…あぁ。」


女の幽鬼のような青白い肌…あれは…


「水銀かな…鉛かな…」
「あれは、多分鉛…だろうな。」
「ならまだ…ましか…でもあの感じじゃ…結構長いこと触れてるんだろうね…」


夜、蝋燭の黄色い灯りでは肌が美しく見えないという理由で真っ白な白粉が流行ったことがある。水銀や鉛で恐ろしいほど白く塗あげた肌は、夜みずみずしい肌へ姿を変える…特に美しさを生業にする職業の女達はこぞって飛び付いた時期があった。
しかし、それは直ぐに使用禁止となった。
人体への害が大きすぎたからだ。特に水銀は短期間で症状が現れ、生まれてくる子への影響も大きい。




「そんなわけないとわかっているでしょう。小鈴も同じように苦しんでいるのですから」



赤い髪に翡翠ひすいの目を持つ女性の声は落ち着いている。
西方の血を色濃く継ぐ玉葉妃は顔を上げると医者の顔を見る。



「ですので、娘のほうの容体も診ていただきたいのです」



なるほど。医者が東宮ばかり診て、自分の娘を診ないことを、抗議しにきたのか。
母親としては当然だろう。が、ここは後宮。男児優先は当然のことだろう。

しかし、あんなに特徴的な二人の近くにいて…全然気付かないとか…


「やぶじゃないの?」
「…同感だ。……知らない…のか?」
「論外でしょ。ド素人の私だって知ってる。」
「……ん?」


姐さんから、なに言ってんだコイツと言わんばかりの視線を感じるが、間違っていない。

私は、優秀な医者の義父さんと、猛烈にに薬と毒を愛す薬師の姐さんを持つ一般人なのだから





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