第4章 夢遊 ※高
「つまり、この遊女たちと芙蓉姫は同じだってこと?」
幼馴染の武官は、属国とはいえ一国の姫に求婚できる身分ではない。
武勲を立てていつの日か姫を迎えに行くつもりだった。
しかし、姫は政略により後宮に入ることになる。武官を思っていた姫は、得意の舞踏を失敗して皇帝の気を引かないようにしていた。
案の定、二年間夜伽はなく身はきれいなままである。
武勲を重ね、次の勲功くんこうで芙蓉姫が下賜されるとなったころ、姫は怪しげな徘徊をするようになる。
間違っても、皇帝が芙蓉姫を惜しいと思わないように、御手付きにならないように。
御手付きになれば、下賜されるのは後になる。また、処女性を重んじる芙蓉姫にとって、夜伽を行った時点で幼馴染に顔向けできないだろう。
東門で踊っていたのは、戻ってくる幼馴染の祈願のため。怪我をせぬように祈るため。
「あくまで推測です」
姐さんの言葉を聞いて、玉葉妃は に視線を向けた。
この一ヶ月間、芙蓉妃の元に通っていたのが であることに翡翠宮の者は気付いている。
が、 は無表情を貫いて話さないという意思を示している。何時もは素直に顔に出るが今回ばかりは全く読めない。
それを見て玉葉妃は諦めたようだ。
「なんていうか、帝については、なきにしもあらずなので何も言えないわ」
寵妃は少し困った顔をしている。
好色な皇帝が、武官がそこまで望む姫に興味を持たないとは言い切れなかった。
「芙蓉妃がうらやましいなんて言ったら、私はひどい女かしら」
「そんなことないと思います」
皇帝を心から想っている玉葉妃。
多くの妃を持つ皇帝。
仕方ないことだとしても………女として…
「どこに行くんだ?」
「あっ…姐さん。」
その日の夜、皆が寝静まった頃を見計らって部屋から出たら、姐さんが壁に身を預けて腕を組んでいた。
所謂待ち伏せってやつだ。
「やぁーあの~散歩に…」
「ふぅん?」
近づいてきた姐さんが、片手を伸ばしてきて、 の頬を覆うと親指で目尻を撫でた。さらに下ろしていた髪の毛に手を滑らせると一房掬い上げて…髪に向けていた視線を に戻す。
「ねねねねねね姐さん!?」
「こんなにおめかしして、何処に散歩?」