第4章 夢遊 ※高
「姐さん!!」
しっかり元通りに髪をひっつめた が二人のもとに駆け寄った。
助かった…という顔をしてるので一生懸命私から意識を逸らしてくれてたんだと思う。ありがとう姐さん。
それから、薬の処方について話しながら翡翠宮まで戻っていく。
上で見た芙蓉妃の様子には一切触れないで。
普段、 につられて話をする高順も、本来は猫猫と同じ側の自分からはあまり話さないタイプなので、二人の話を静かに聞きながら後をついていた。
物言いたげな視線を感じないこともないが、以心伝心出来る仲ではないので…気付いてあげないことにした。
「こんにちは」
「………。」
ニコニコ満面の笑みで立っている を不審そうな目で見ているのは、昨日会ったばかりの芙蓉妃。
大変警戒されているようである。
「朝は寝たいかと思いこの時間にしました。昨日ぶりですね?」
「あの時の…」
「はい。本日は治療…目的で参りました。よろしくお願いいたします。」
「……。」
手に持っている盆には、煎じて飲むタイプの…薬…ほとんど茶に近いものがある。
侍女にお湯を頂きたい旨を伝え、準備にはいる。
「端くれとはいえ、私は薬師です。得た患者の情報を口外することはありません。」
「……。」
「一つ確認しますね。来月に幼馴染みの武官様の元に行かれるそうですね。」
「……。」
「………それは貴方にとって嬉しい事ですか?」
「っ……」
ずっと無表情を貫いていた芙蓉妃の表情が崩れる。
正直だ。あまり駆け引きを得意とするタイプではないのだろう。
「なる程。では違う治療もしましょうか。」
「まずは…夢遊病の薬…という名目で作った気を落ち着かせる効果のある、ただのお茶です。まず私が飲みますね。」
芙蓉妃のところで準備された茶器に薬茶を入れて、飲んで見せる。
気を落ち着かせる薬…というより、もう香りを良くしたお茶と思えばいい代物だ。
少し柑橘の香りを混ぜただけだ。
「…美味しい…」
「ありがとうございます。良い香りになるように、ただのお茶に柑橘の匂いを混ぜただけ…なので安心して下さい。本来、夢遊病に薬はないので変なものは出しません。」
「…変なもの…」
「変な粉とか、妙な汁とか、得体の知れない丸薬とか?決して出しません。」