第4章 夢遊 ※高
うわぁ...この人絶対に姐さんが病気に反応するって確信もって言ったわ...流石だわ……嫌な奴ぅ...
おもむろに伸びた腹黒似非天女の手が、姐さんの頬を撫でる。
「それはどうやったら治るんだい?」
...それを聞くのに、姐さんの頬をなで回す理由は...どこにあるんだい?
………その無駄な動きしか出来ない腕、チョン切ったろうか?
「薬で治せるような病気ではありませんので、分かりません」
過去に妓楼で見たことがある。お義父さんについていき、一緒に診させて貰ったことがあるが、お義父さんは何の処方もしていなかった。
大人が発祥する夢遊病は心的要因による発症なので、薬でどうこう出きるものではなかったからだ。
「薬では...というと?」
何なら治るんだ?と聞いてくる奴の顔は腹黒似非天女の名を欲しいままにしているあの顔だ。
姐さんは、目を合わさないように頑張っている。
「姐さんの専門は薬です。気の病に薬は効きません。頼るのは薬屋の姐さんではなく医者です。」
助太刀をしたが、奴は変わらず粘着質な視線を至近距離で姐さんに向けている。
姐さんが顔を背ける方に体を持っていって視界に入り込もうとしている。
うざっ...この男、粘着質でメチャクチャウザい。
挙げ句の果てには、姐さんの頬を片手で掴むように固定して、自慢の腹黒似非天女スマイルで距離を縮めている。
助けないと...
つい、反射的に座っていた椅子から立ち上がり、椅子を両手で掴んだ。
「...努力します。」
実行に移す前に姐さんが折れてしまった。
……残念…。
夜中に迎えに来てくれたのは、腹黒似非天女ではなく高順さんだった。
自分は動かずに部下を動かすとは...いや、決して好んで見たい顔ではないので、全然良いのだが...あれを仕掛けて始めて会うので、少々気まずいような気がしないでもない。
が、覚えていない設定でいくと決めたからには、何時も通り振る舞う必要がある。
「では行きましょうか。」
「よろしくお願いします。」
灯籠を持って先導して貰う。
道中、奥の茂みがガサガサと動いたり、色めいた声が聞こえてきた。姐さんは顔をわずかにひきつらせていたが、私は夜こっそり動き回っていて、そういう事情を知っているので平然と歩いている。