第4章 夢遊 ※高
一礼して、腹黒似非天女の横をすり抜け医務室に入ると、何時も通りナマズ先生がゴリゴリと薬草を挽いていた。
今度は何の薬草をを粉砕してるのか…
「先生、薬を見て貰えませんか?」
「おお、嬢ちゃん達かい。ちょっと待ってな。」
私たちに気付いたナマズ先生が茶菓子と雑茶を準備してくれた。
甘いものも食べれなくはないけども、辛い物の方が好きな姐さんのために煎餅が準備される。 は甘党ではあるが、甘かろうが辛かろうが美味しく食べる。流石医者...というべきか、観察眼がない訳ではないのだ。ヤブなだけで。
「私の分もお願いするよ。」
再びジョワッと毛が逆立った。なんでこうも、わざと甘さを付加させたような嘘くさい高めの甘い声をだすんだろう...気持ち悪いっての。
ナマズ先生、頬を赤らめないで。
ナマズ先生はいそいそと、だしたはずの煎餅と雑茶を引っ込ませ、月餅と白茶に変更した。姐さんは好物をチラつかせられたあとに甘いものが出てきたので、遠い目になってしまっている。
姐さんの前に腹黒似非天女が座ろうとしたので、姐さんは色々理由をつけてその場を離れようとしたが、さすが腹黒似非天女。神々しい笑顔のまま、姐さんの肩を押さえ込んだ。優雅な動きに見えるが、あれは見た目以上に強く体を押さえ込まれているはず。座り直されるときに明らかに崩れ落ちるように座り込んだから。
「!?」
「気安く姐さんの肩を撫で回さないで下さい。」
横から奴の手を払い落として、手が触れていた姐さんの肩をポンポンとホコリを払うように撫でておいた。
大変不満そうな顔をしているが、それすらも美しいのが腹が立つ。
「……老師先生、すまないが、奥からこれをとってきてくれないか?」
気を取り直して、ナマズ先生に声をかけた腹黒似非天女が手にしている紙には、びっしりと薬草の名前が書いてあった。あれを全部揃えるにはそれなりの時間が必要だ。
残念そうに奥の間に入っていくナマズ先生を見送って、意図に気付いていた姐さんは自分から話しかけた。
「本題は何でしょうか?」
「幽霊騒ぎは知っているかい?」
「...噂程度には...」
「じゃぁ、夢遊病ってのは分かるかい?」
突然の病名に、姐さんの瞳に輝きが宿った。それを見逃さなかった腹黒似非天女は意味ありげな笑みを浮かべた。