第4章 夢遊 ※高
姐さんと、作った薬を持ってナマズ先生のところに向かう。
作った薬は、絶対、品質に間違いはないけれども、本来医師を通して医師の判断で使うべき物…だからだ。
「幽霊の話、小蘭からは聞いたことないな。」
「なら最近なのかな?…実体の方が得意なんだけど…倒せるから。」
後宮はぐるりと城壁に囲まれており、東西南北の四門以外出入りが出来ない作りになっている。城壁の向こうは深く幅広い堀が通っており、脱走・侵入共に不可能でだ。
「堀の下には後宮から抜け出そうとした妃が今も沈んでるとか…?」
「あ、それは平気。実体だし。それに人間は溺水しても体から発生する気体で必ず浮くからちゃんと処理されてるよ。」
「……無駄に詳しいな。」
「知識をくれたお義父さん、ありがとう。」
「親父、あなたの娘は確実に可愛げの少ない娘に育ってます。」
「二人ともね。」
違いない。と笑いながら歩いていると、ジョワっと毛が逆立った。
「お仕事ご苦労様。」
「いいえ、それほどではございません。」
わざとらしい、甘ったるい声を無視するわけにいかず、姐さんと一緒に渋々振り返った。
腹黒似非天女は姐さんに相も変わらずキラキラしい笑顔で距離を縮めている。
姐さんは無表情を貫いているが、毛虫を見るような目は隠しきれてない。
こんなに露骨に嫌な顔されてるのに…近づいて来るのは、実は被虐趣味でもあるんじゃないかと疑うレベルだ。勿論ちゃんと姐さんを回収して適正な距離を取らせて貰う。
奴は後宮を司る三部門が、集まるここらでよく出没する。三部門の監視のような立場で…宮官長よりも上の立場…なようだけど……どんな宦官よ…
「現帝の後見人…にしては若いか…。子息…いや、宦官になる必要性…あ、皇帝の御手付き?人は見かけによらないなぁ…」
「 、ただならぬ内容が全部漏れてる。あり得そうで洒落にならん。」
胡散臭い顔を直視したくなくて…奴の胸元をボンヤリ見ながらの会話。
唇をほとんど動かさずにモゴモゴ話しているので、相手には聞こえないが、もし聞こえていたら…ちょっとヤバイ。
「なんか、ものすごく失礼なことを考えてる顔に見えるんだけど」
「気のせいではないですか?」
姐さんが冷静に対応してくれたのでありがたくそれに乗っかって頷いておく。
そりゃあ、滅茶苦茶失礼な妄想してましたので。
