第3章 媚薬 ※壬
だから、薬屋姉妹が医務室に行く日は仕事を調整して立ち合うことにした。
やはり見ていて飽きない姉妹だ。
男嫌いのはずの薬屋妹が高順にやけに懐いているように見えるのは…気のせいか?
近付くとやはり嫌な顔をされるのが面白い反面…なぜか面白くない…拮抗する感情が渦巻いた。
そして、媚薬の受け取りの日
待ち受けていたのは媚薬よりも先に媚薬を使った女達だった。
見ただけで効果のほどは十分に分かる。
そんな強い媚薬を使ったパンを夜食だと言い切った薬屋姉はネジがぶっ飛んでるのだろう。俺が食べてみようとしたら皆に止められた。解せぬ。普段からある程度のことは想定してならしているのだが…
「ちょっ! さん!」
珍しく高順の、焦った声が聞こえたので何事かとそちらに目を向けたが、すぐには何が起きてるのか分からなかった。何故高順が薬屋妹を膝に乗せているのか、何故その手は腰をガッシリ掴んでいるのか…何故男嫌いなはずの薬屋妹が高順に身を寄せようとしているのか…全く意味が分からない。
「おい、薬屋。アレはどうなってる?」
「あ?……あぁ……食ったな。」
「………何を?」
「媚薬ですね。しかも強烈に効く方。」
「………」
な ん だ と ?
もう一度薬屋妹の方を見ると、既に高順が押し倒されていた。
高順は強い。あの程度の体躯の女なら片手で処理することは容易い。が、簡単に手を上げるタイプでもない。
力でねじ伏せる程の必要性は無いと判断しているのだろう。
「アレは媚薬…と言うか巧克力には耐性があるので、純粋に酒で酔ってますね。」
「………酔う?」
「結構強いお酒が入ってます。巧克力にも中の水果にも。 はもともと酒が飲めないタイプなので」
「…はぁ。」
高順を助けに行こうとそちらに足を向けようとしたら、薬屋姉服の袂を掴まれて足止められた。