第3章 媚薬 ※壬
「どうしました?」
「確認ですけど、相手の性別は?」
「……それは…。」
高順が言いにくそうにチラッと腹黒似非天女の方を見たので、仕方なく直接聞くことにした。
「何かの呪いか?」
近づいたところで向こうから声をかけてきた。
視線は姐さんで固定されている。
「流石後宮の医務室ですね。珍しい薬草も取り揃えているので、とても感動しているようです」
「アレがか?」
「とても感激してます。」
「変な動きしてるが?」
「一時間くらいしたら正気に戻ります。」
「一時間……」
腹黒似非天女の顔がひきつった。
姐さんが楽しそうなんだ。良いではないか。可愛いなぁ……じゃなくて…
「腹ぐ…壬氏様に確認したいことがあります」
「はらぐ…?…なんだ?」
「相手の性別は?」
「聞いてどうする?」
「性別にあわせてより効くもので調整します」
「……」
壁にもたれ掛かっている壬氏に何時もの胡散臭い笑顔はなく静かにこちらを見つめてくる。
探るような何かを感じるが、貴方が女好きだろうが男色だろうが全く関係ないし、興味もない。…だからとっとと答えろ。
「性別は……言わない。」
「分かりました。」
一礼すると高順さんのところに戻った。
「この小豆蔻(カルダモン)は戻して、あの桂皮(シナモン)にします。」
「あと、アレ!!アレがたくさん要ります。」
ある薬棚をさしてピョンピョン飛んで主張した。
「あー…全然足りない…」
「何ですか?これは」
高順は、 の掌に乗せられたものを覗き込んで首を傾げている。
掌にある赤褐色の種子は、杏仁のようだが形は紡錘型をしている。
「加加阿です」
「初めて聞きますね」
「西の果ての南方にあるので、あまり目にすることは無いかと」
「なるほど」
これがないと始まらないな...と悩んでいたら、手元が暗くなった。顔をあげると、至近距離に例のご尊顔があり、つい数歩後ずさった。
「.........」
「いきなり近づかないでください。はらぐ...壬氏様、これが沢山要ります」
「...交易品を探せば見つかるだろう」
材料はこれで問題ないだろう。あとは加加阿が来てからだ。
チラッと姐さんの方を見ると、まだ薬草を物色している。
これだけ種類があれば、もうしばらくかかるだろう。
後は…姐さんが落ち着くのを待とう…