第3章 媚薬 ※壬
「作用する物って幾つかあるけど、何作るの?姐さん」
「巧克力を作ろうかと。」
「あっ…アレ…。今の季節固まる?」
「坚果(ナッツ)や干果(ドライフルーツ)につけて固めようと思う。」
「巧克力の塊よりはいいかも…分かった。」
材料が調達できるように、医務室に入れるように壬氏が手配してくれたようなので、現在向かっているが、侍女頭の計らいで周りに怪しまれないよう洗濯かごを背負っている。
「この時期冷たい水を確保するのって...流石に難しいよね?」
「そうだろうな。」
「冷却調温が必要ない方法を取った方が良いかもしれないね」
「そうだな...時間がかかりそうだ...。」
「作るなら...良いものを作るんでしょ?」
「勿論。」
姐さんのこういうところはぶれない。
朝晩は涼しいので、その時間を利用できるように作ればいいか...
「ところで姐さん。...お酒は?」
「...余ったらな。」
「やった!!」
よし、余り物を美味しく食べれるように、全力で取り組むぞ!!
指示されていた医務室には入ると、高順と腹黒似非天女がいて、その隣でナマズ髭の医師が値踏みするような目で迎えてくれた。自分の領域を荒らす小娘達が気にくわないのだろう。
だが、穴が空きそうなほどじろじろ見ないで欲しい…
姐さんはちょっとつり目で、覗き込むと藍の虹彩が美しく大きな瞳が可愛いし、光に当たると緑がかってみえるツヤツヤの黒髪がキレイで見所満載だけど…私は小汚ないから…不潔に見えるという意味の対比した視線?
艶のない面白味のない黒い髪を頭の後ろで1つにまとめているだけだし、目もただただ黒いだけ、そばかすにまみれた私は姐さんが自分をそうだと思っているよりもはるかに正統派の醜女だと自負している。こっちが本物。
薬棚で囲い込まれた部屋に案内して貰った瞬間、姐さんの表情が変わった。
紅潮した頬、潤んだ瞳、口許も笑みが浮かんでおり、色々見てまわっては珍しい薬の前で変な躍りを披露している。
ああなった姐さんはなかなか戻ってこないので、代わりに材料を探してまわる。
そこでふと大事な情報がないことに気付き、後ろで高いところの材料取りのためについてきてくれている高順を振り返った。