第2章 护手霜
「…なんですか。」
「私の手にもやってみてくれないか?」
「ヤですよ。何言ってるんですか。それ以上の美を求めて何を目指すんですか」
「効果が…気になるじゃないか」
知らねぇよ。
尊大な態度で手を差し出してくる感じがなんかムカつく。
毛を逆立てる勢いで威嚇していると、姐さんが私が間に入ってくれた。
「で、それは簡単に作れるものなのか?」
「材料さえあれば。」
やけにしつこく聞いてくるので、仕方なく作り方を説明する。
まず、蜜蝋の精製。
蜜蜂の巣から蝋を抽出するので、まずは可能な限り細かく砕いていく。砕けたらなるべく目の細かい木綿に包んで、深めの鍋の中に入れて沸騰させる。不純物が木綿の中に残るので、溶け出た蜜蝋をゆっくり冷却させていく。蝋は水に浮き不純物は沈殿するので、分離しやすく、加熱と冷却を何度も繰り返し純度の高い蜜蝋が出来たら完成だ。
植物油も、原料はなんでも良いが今はヒマワリの種が大量に収穫できる時期なので今回はそれを使った。油を抽出しやすくするために、中華鍋で均一に種を炒り、細かく磨り潰して布で油を濾して抽出する。時間をかけて濾過と不純物の沈殿を繰り返して完成する。
全て揃えば、湯煎で溶かした蜜蝋2gに油10mlを入れて冷やし固めるだけ。材料を作るのは大変だが作り方は簡単である。
「 …その材料、誰から貰ったんだ?」
「え?自分で調達したよ?」
自分も手に入れようと思ったのか、キラッキラの笑顔で聞かれたので、うっかり正直に答えた瞬間、姐さんの目が剣呑な光を帯びた。
あ、ヤバッ…って思った時にはもう遅く、腕を取られ、袖を捲られてしまった。
「蜂刺傷…」
「うっかり敵認定されちゃって…」
「これは酷いな」
さらされた腕は無数の刺傷で赤く腫れ上がっていた。
腹黒似非天女も顔を歪めている。
「ってことは…ここもか?」
「ぎゃーー!姐さん姐さん待って待って!!」
胸元もガバッと開かれて急いで手で抑えた。
見えないところ全部にありますーー!!!
両肩から落ちるギリギリまで服を開かれてしまった。
ここ玉葉妃のお部屋だからねー!!!
「蜜蝋と油の濾過精製に上の下着使ったから、上裸なのーーっ!!!」
「「「「………」」」」
「………他に無かったのか?」
沈黙が痛いです…