第2章 护手霜
「姐さん!これこれ!!完成したよ!!」
「ん?何が…?」
「护手霜(ハンドクリーム)!」
早く姐さんに使いたくて、廊下で声をかけた。
入れ物が無かったので、合わせの貝殻をメチャクチャ洗って乾燥させてその中に保管してしまっているのはご愛敬。しこたま洗ったから綺麗綺麗!
「この匂い…蜜蝋?」
「姐さん…流石…嗅覚犬並み…」
すぐに成分に気付くとは思ってたけど。使う前とは…
「香料入ってないからちょっとハチミツ臭いけど…ということで手を貸して!」
「…ん。」
今までの経験上、こういう時の私は絶対にやると知っているので、大人しく手を出してくれる。
小指の先で軽く掬って、手に馴染ませてそっと姐さんの手を包み込むように撫で始め、せっかくなのでツボ押しも一緒にやっとく。
丁寧に濾過して作ってるので、滑らかでしっとり…ベタつかない仕上がりになっている。
「良い感じ…」
「でしょー!じゃあ反対の手ね!!………げ。」
指を擦りあわせて仕上がりを見てる姐さんの反応が嬉しくて、張り切って次の手に移ろうとした時、嫌な気配が近づいてくるのを感じた。
「こんなところで何してるんだ?薬屋」
「………」
無意識なのかわざとなのか判断に困るが、腹黒似非天女とそのお付きはあまり気配がしない。肩越しに振り返ると結構近い距離で胡散臭い笑みを浮かべてこちらを覗き込んでいた。
どうも奴は周期的に妃のところをまわったり巡回しているらしい。
さりげなく…そっと貝殻を懐に忍ばせて、姐さんのハンドマッサージを継続する。
「姐さんの手を思う存分触ってるだけなのでお気になさらず。」
「今胸元に入れたのはなんだ?」
コイツ…目敏いな…
「…貝です。」
「中身は?」
………コイツ…………………。
しつこーーーーい!!!