第2章 护手霜
特に隠しているわけではないけども、姐さんの左腕には包帯が巻かれている。
その下には、切り傷から刺し傷、火傷の痕に針のようなものが刺された痕まで実に様々な痕が…
傷薬や化膿止めの効能を調べたり、毒を少しずつ飲み耐性をつけ、時に自分から毒蛇にわざと噛まれることもあった。なので、利き腕の逆の左腕に傷が集中している。
探求心を持つことは悪いことではないが、姐さんの場合ちょっと行きすぎていて、変態の領域に足を突っ込みかけている。
花街に暮らす自分の娘が遊女以外の道を進めるようにと、薬の知識と文字を教えたらしいが、往々にして子は親の思う通りに育たないものである。
「姐さん最近、怪しい実験してる?」
「 怪しいとは失礼な…それに…今の環境で何か出来ると思うか?」
「そうだよね。じゃぁ、洗濯場にいたからかなぁ…ちょっと手が荒れてるね。」
「…そうか?」
自分の手を見て首をかしげている姐さんは、本当に気にしていないんだと思う。
本人は毒と薬反応以外は自分の身体の事に無頓着なので、義妹である私がしっかり管理させて貰っている。義理だったとしても家族という形態で生活すると自然と何かを補うように育つものである。
有り難いことに、お義父さんと姐さんのお陰で本当に色んなものを学ばせて貰っている。
治しても治してもすぐに実験を繰り返すため、より効能の高い治療薬を研究する日々を過ごしていたため、たくさんの副産物も作り出してきた。
ちょっと気になる所があるので…薬ではないがアレを作るタイミングが来たようである。
姐さんが毒味をする時以外に働く事がほとんどないので、その時間を使って後宮の奥…あまり人が踏み入れない森の中を材料集めに散策する事にした。
人に見つかるとめんどくさいので、姐さんと別行動だ。
昼間に採集、夜に精製を繰り返し一週間後に目的のものが完成した。