第1章 後宮下女
睾と竿をちょん切られた男は、往々にして丸くなり中性的な体になる...ことが多い。
と猫猫を呼び止めた宦官も、同年代の男性に比べ、ずいぶんと筋肉量が少なく丸い体をしていた。しかし、部屋の真ん中で天女のような笑みを浮かべている...でも、どことなく偉そうな男は、顔こそ中性的ではあるがかなり鍛えられた体をしているように見受けられる。さらに言えばその後ろに控えているいくらか年嵩な宦官も、宦官らしくない身体だ。武官といわれた方がしっくりくる。
実際に見えている範囲の首筋や手だけでも十分分かるが... はその生い立ちゆえに、服を着ていてもある程度身体の分析は出来るように “訓練“されている。
だが、あれだけ人間離れした美貌であれば、男も女も寄って集って大変なことになりそうだ。宦官という衣を着た方が天女様としては安全なのかもしれない。それでも寄ってくるのは、そっちの道に走った男か、力で十分ねじ伏せられる女くらいなもの。しかも、後宮という環境下では危ない薬品などの心配はない…はず?
「なるほど。......苦労してんだなぁ......」
「... ?」
自分で出した勝手な解釈に、うんうんと頷いていたら、何か察したらしい姐さんが呆れたような視線を送ってくる。
そのタイミングで、流れるような美しい動きで天女宦官が立ち上がった。
机に向かい、卓上の紙になにやら書き物をすると、もともと美しい笑顔に甘露のような甘やかさを加えて、その書き物を掲げた。
『そこのそばかすの女、お前達は居残りだ』
その内容に、姐さんと共に固まった。
いきなり尊大な書きなぐり。顔の印象とは裏腹に、なかなか力強い文字。
嫌な予感が、確信に変わってしまった...気がする。
天女は書き物を机に置くと、手を二回叩いた。
「今日はこれで解散だ。仕事に戻っていいぞ。」
その言葉に、下女達は訝しみながらも、名残惜しそうに天女の顔を見て部屋を出ていく。
最後に入室したので、後方に位置していた には、下女達の顔が見える。
みんな同じくらいの体格で、目立つそばかすがあった。
あの言葉に該当する下女達が次々と帰ろうとしている。あんなに名残惜しそうにしてるのに...文字が読めないのか?
あっ!!!!やばっ...!!