第1章 後宮下女
「梨花妃にも伝えましたが、私が何を言っても逆効果だったみたいです」
梨花妃は今も顔色の悪い肌と目の下の隈をを白粉で隠している。
「いったい、誰がこれを…」
「あの日、私が医師に娘を診てもらうようにいったときです。あの日の夜、窓辺に置いてあることに気付きました。石楠花の枝に結んで...」
では、あの騒動が原因でなにかしら気づいたものが助言したというのだろうか。
そうであれば、一体誰が?
「宮中の医師はそのような遠回しなことをしないでしょう」
「ええ、最後まで東宮の処置がわからないようでしたから」
当時の事を思いおこしていた壬氏の脳裏に、ふと違和感を持った二人の下女が浮かび上がった。
何か呟いていた...確か...
『何か書けるものが...』
思い出した瞬間、頭の中で事の事象が繋がった。
天女のような相貌に、艶やかな笑みが浮かんだ。
「玉葉妃、この文の主、見つけたらどうなさいます?」
「それはもう、恩人ですもの。お礼をしなくてはね」
「了解しました。これはしばらく預かってよいですか?」
玉葉妃の部屋を退室した壬氏は笑みを浮かべている。
新しいおもちゃを見つけた子供のような...
無邪気な笑みを……