第16章 拒絶・・甘やかし。
――スタジオの控え室、二人きりになった杉田と工藤新。
杉田は静かに、新の目をじっと見つめる。
「……工藤君、少し忠告しておく」
新は驚いた表情で後ずさりし、口を開く。
「ええっ……なんですか?急に」
杉田は微笑を浮かべるが、その瞳には冷たい光が宿る。
「今回は多めに見てあげるけど……」
声は穏やかだが、ひとつひとつの言葉に威圧感がある。
「僕もここの業界長いからね……興味がなくても、色々な監督やスタッフから話は聞くんだよ」
新は言葉に詰まり、少しだけ顔をこわばらせる。
杉田は少し身を乗り出し、低く声を落として続ける。
「まぁ今回は一度目だから、晒しあげるのはやめてあげたけど……」
ゆっくりと、新の反応を確かめるように間を置く。
「唯を貶めたいのかは分からないけど……もし、唯を傷つけようとするなら、僕と中村は絶対にお前を許さない」
真剣なまなざしが、新の心臓を直撃する。
杉田「……ってか、この業界でいられると思うなよ」
最後に、静かに、しかし重く響く言葉を残す杉田。
新は口を開けたまま、言葉が出ずに俯く。
沈黙の中、杉田の存在感だけが、室内にずっしりと重く漂っていた。
――杉田が新に向けて厳しい忠告を続けようとしたその時、中村が静かに部屋に入ってきた。
中村「……杉田、今からアフレコなんだ。言い過ぎだろ」
中村は軽く頭にチョップをくらわし、杉田を制する。
杉田は少し肩をすくめ、悔しそうに顔をしかめるが、中村の目は冷静だった。
中村:「まぁ……俺も工藤のやってることには怒ってるよ。ましてや幼なじみで、俺たちが大切に思ってる子を貶めようとするなら、そりゃ黙ってられない」
中村は少し間を置き、落ち着いた声で続ける。
「けどさぁ……勿体ないよ。あれだけ実力があるのに、なんで純粋にやろうとしないんだ?そういうところなんじゃあないの?主役取れないって」
新の表情が少し硬直する。
中村:「その嫉妬心、全部自分のために向ければ、君はもっと上を目指せるはずだと俺は思う。」
柔らかい声ながらも、言葉の重みはずしりと胸に響く。
杉田は横で黙り込みながら、新を見つめる。
中村の言葉が、冷静ながらも力強く、新に向けた「警告」と「導き」の両方になっているのが伝わる瞬間だった。