第11章 新たな...企み。
新の手を力を込めてどけ、真っ直ぐに睨み返す。
唯 「私だって、嫌なことはあるんだよ」
新「…… 唯先輩って、泣き寝入りするタイプだと思ってました。僕の言う通りにして、抵抗もしないのかなって」
唯「……何が目的なの?」
新は少し笑って、肩をすくめる。
新「この後、二人で2次会に行ってくれたら……教えてあげますよ?」
唯「変なことするなら、絶対いや!」
新「普通に先輩と親交を深めたいだけですって。何もしませんよ」
軽く笑いながら、わざと目を細める。
唯(内心)
……本当何考えてるか、全く読めない……。
店を出たところで、スタッフや先輩たちが口々に声をかけ合っていた。
「二次会行く人〜!」
「カラオケ?それともバー?」
人の輪が自然とできていく中、隣で新が小さく囁いた。
新
「じゃあ先輩、一緒に二次会行ってくれますよね?」
唯は少し言葉に詰まる。
唯「やっぱり……私は……」
その時。
中村
「神里さん、大丈夫?」
その声に、思わず胸が軽くなる。
唯
「あっ……」
(内心)悠一……。
悠一はじっと、唯の様子を観察する。
中村
「もしかして結構飲んだか? 前から酒弱いし、こういう席だと無理しがちだから」
新
「いえ、ずっとウーロン茶でしたよ。……今も、一緒に2次会しようって先輩から誘われたんです」
中村「……二次会?」
眉がわずかに動く。
中村(内心)
…… 唯から誘うか……?
違和感を覚えた悠一に対し、新は笑顔を崩さず続ける。
新「あっ! そっちは先輩たちで楽しんで来てください。一次会は僕の歓迎会で気を使わせちゃったでしょうし。僕は唯先輩と一緒に次、行くんで」
その場を和ませるような柔らかな声色。
悠一は唯に視線を移す。
中村「そうなの? 神里さん」
唯
「うん……。初めての後輩だし、ちょっと新くんとゆっくり話してみたくてさ」
無理に作った笑顔。
その裏で、胸はどくどくと早鐘を打っていた。