第11章 新たな...企み。
アフレコが終わり、スタジオの空気が少し落ち着いた頃。
新
「演技で分からないことがあるんですけど……時間、もらってもいいですか? 神里先輩」
唯
「多分この後、私も仕事ないし、工藤くんの歓迎会あるでしょ? それに間に合えばいいと思うから、別室に行こうか」
スタジオの別室。静かな空間で、二人は台本の読み合わせを始める。息遣いや間の取り方を一つずつ確認しながら、唯が優しくアドバイスをしていく。
唯
「ほんとに工藤くんは、頑張り屋さんだね! 演技も上手だし、新人時の私に比べたらすごいよ」
新
「いえいえ、まだまだですよ。……何となくイメージがつかめました。ありがとうございます、唯先輩」
唯
「ええっ!? 名前呼び……?」
新
「あ……やっぱり、馴れ馴れしかったですよね。ごめんなさい」
子犬のようにしゅーんと肩を落とす新くん。
唯
「ううん! ちょっとびっくりしただけ」
(内心)工藤くん、子犬みたいで可愛い……。先輩たちが可愛がるのも分かる。
新
「本当ですか?」
そのまま、新くんが唯の手をぎゅっと握る。
新
「じゃあ、先輩も“新くん”って呼んでくださいね!」
ゆい
「う……うん……じゃあ、新くんって呼ぶね」
焦りながらも、思わず笑顔がこぼれる。
(内心)私と2歳しか変わらないのに……コミュ力おばけだなぁー。