第2章 駐車場から始まる夜
スーパーでの買い物を終え、車内には紙袋のカサカサとした音が満ちていた。
後部座席に座った唯は、膝の上に食材を抱えながら、ちらりとフロントシートの二人を見る。
唯(……何作ろう)
さっき、牛肉は買った。でも、それをどう料理するかが決まらない。
ステーキ? それとも炒め物? 煮込みにしても、時間かかるし……。
迷っている間に、運転席と助手席の会話はどんどん盛り上がっていく。
杉田「なぁ、あの新作やった?」
中村「あー、まだ途中だな。ラスボス戦、演出やばい」
杉田「だよな! あと、音響、ガチで劇場レベルだった」
中村「……でも、SEの処理はちょっと甘い」
杉田「そこ気づくの、声優あるある」
笑い合う二人の声を聞いていると、自然と口元が緩む。
(こういうやり取り、昔と変わらないな……)
でも、どこか違う。
声の響きが大人っぽくなったのと――
二人とも、あの頃よりずっと、かっこよくなってる。
「……ん?」
ふと、車がゆっくりとスロープを上がっていく。
視界に飛び込んできたのは、光に縁取られた巨大なタワーマンション。