第2章 駐車場から始まる夜
スーパーで交わる視線___
スーパーの明るい照明に包まれた通路を、三人で並んで歩く。
夜の時間帯だけあって、レジ前は少し混んでいたけれど――
不思議と、その雑踏すら心地いい。
カゴを片手に、唯は 思いだしたように口を開いた。
「そういえば……調味料とか、ある?」
杉田「大体揃ってるよ。俺が料理してるから」
さらっと言うその声が、なんだか誇らしげで。
唯「……まぁ、そうだよね。智和いれば、そうだよね」
にっこり笑って、つい口をついた本音。
「悠一、キッチン物置にして封鎖するからね」
ぴたり――と、横を歩いていた悠一の足が止まった。
中村「……それ、どこで聞いた?」
声は低く、眉間にはうっすら皺。
唯「えっ……えっと、ラジオ配信だったかな?」
目を逸らしながら思い出す。
「そのときお腹抱えて笑ったんだよね。智和も一緒にいたでしょ?」
杉田「あー……いたいた」
軽く笑って頷くと、悠一の方をちらっと見る。
「まぁ、あれだな。中村が一人暮らししてたときの話だし。
今は俺が阻止してる」
言いながら、突然、低い声で人気声優のモノマネを始める。
杉田「――『ここは俺の聖域だから』……とか言ってたっけ?」
「おい...杉田 それ似てないからな」
不機嫌そうに言いながらも、耳の先が赤い悠一。
唯(……やっぱり、こういうとこ、昔と変わってないな)
思わず笑いそうになるのをこらえる。
そんな空気を切るように、杉田がさっとお酒コーナーの方へ。
唯酒飲めるだろ? 飲まない?」
「え……今日はやめとく」
ほんの少し視線を逸らす。
唯「悠一、飲めないし」
中村「アルコールアレルギーだから、そもそも無理」
淡々と告げる声。でも、その目はどこか優しくて。
「とりあえず、俺はコーラでいい」
杉田「だよなぁ。変わらねぇな、悠一」
二人同時に、くすっと笑う唯と杉田。
(こうして笑ってる時間が、なんだか懐かしい)
そう思った瞬間――ふと胸が熱くなるのを感じて、慌てて視線を落とした。
――この時間がずっと続けばいいのに。