第8章 甘く蕩ける夜、
唯 side
あれから――智和も悠一も、嘘みたいに何もしてこなくなった。
まあ、理由は簡単。二人そろって、私がたっぷり説教したからだ。
「ほんっとに、絶っっ対ダメっ! ほんとに怒るからね!」
そう言ったときの、のほほん顔の杉田と、不満の中村。
「なんで俺まで……チッ」
……これで、やっと平和になる。
はず、なのに。
胸の奥で、何かがモヤモヤと渦を巻く。
落ち着かない。
二人の気配が遠のいたせいか、静けさが逆に落ち着かないなんて――やだな、こんな自分。
ぶんぶんと首を振り、気持ちを切り替える。
目の前には、次回アニメ収録の台本。
ページをめくるたび、キャラの台詞が頭に浮かび、少しずつ日常に引き戻されていく。
そのとき――机の上のスマホが震えた。
マネージャーからの着信。
「……はい、もしもし?」
内容は、1週間後に大阪で開催される『Aethelgard Online』ゲームイベントの件。前日に前乗りしてほしいとのことだった。
悠一もキャラクターとして参加するはず。
私と悠一は前乗りすることにしたけれど、智和は仕事があるため当日参加。