第7章 焦りと独占欲。
夕暮れ時、コスメの撮影を終えたばかりの唯は、静かな控室でひと息ついていた。忙しいスケジュールの合間を縫っての仕事は疲れるけれど、今日の撮影は特に手応えを感じていた。
そんな彼女のもとに、マネージャーが来てこう告げる。
「次はゲームのアフレコ現場だ。今回、唯さんは新キャラで登場するから、気合入れていこうね。」
唯は深く頷き、身支度を整える。ゲームタイトルは『ナイトネクサス ファンタジアオンライン』――多くのファンが期待する大型オンラインRPGだ。
スタジオの扉を開けると、悠一がそこに座っていた。
黒のジャケットに黒Tシャツ、スキニーパンツがよく似合っていて、唯の胸は少しだけ早鐘を打つ。
悠一はいつもと変わらずクールだが、どこか鋭い視線を唯に向ける。
アフレコ本番
マイクの前で向かい合い、キャラクター同士の緊迫したやりとりが始まる。
悠一(冷徹に)
「転生者よ、その運命を受け入れよ。」
(気合を込めて)
唯「私は自らの道を切り開く――誰にも縛られはしない。」
悠一はふと、唯の首筋から微かに漂う男性用の香水の匂いに気づき、わずかに動揺する。
心の中で――「何だこの匂いは?唯がこんな香水もっていたか?」
その感情が邪魔をして、悠一はセリフを噛んでしまう。
スタッフから取り直しの指示が飛ぶ。
悠一「すみません、もう一回お願いします!」
2回目は無事にクリア。
控室での呼び出し
仕事モードの彼はいつもの涼やかな笑みを封印し、凛とした表情で言う。
中村「神里さん、ちょっといいですか?ここじゃ話せないから、移動しよう。」
唯は素直について行く。
人気もなく静まり返った控室に入ると、悠一は鍵をかけ、唯の手首を掴み、テーブルに押し倒した。
(驚いて)
唯「な…何?悠一…?」
悠一(真剣な眼差しで)
「この匂いは…お前がつけてる香水か?男物の香水だろ。なんでそんなのつけてるんだ?」
(顔を赤らめて)
唯「えっと…今日モデルの仕事で一緒に撮影した方から頂いて、つけてみてって言われたから…」
悠一(呆れ気味に)
「お前はほんと鈍いな…」