第5章 崩れていく境界線
小さく吐息が漏れた。
悠一が唇を離すと、そこには銀色の糸がきらりと光る。
中村「……だって、俺ら、昔からお前一筋だし?」
舌先で唇を舐めながら、低く笑う。その瞳が、暗く燃えていた。
「な、なにそれ……っ」
唯は涙目で、顔を真っ赤に染める。
「ふっ……二人とも……酔ってるの……?」
必死に声を絞り出すけれど、視線は揺れて――
「悠一……コーラしか、飲んでないよね……?」
その言葉に、悠一の口元がにやりと歪む。
「そうだな。酔ってんのは――お前の方だな」
囁くように低い声。
その瞬間、耳の奥がじんわり熱くなる。
「…冗談でもないし嘘なんてつかないよ」
右側から、智和の声。
耳元にかかる吐息に、ぞくりと背筋が震えた。
「たくさん飲んだでしょ? ……唯
名前を呼ぶ声が甘すぎて、呼吸が詰まる。
「……からかってるの、やめて……」
涙目で、必死に首を振る唯
でも――その頬を、智和の指先が優しくなぞる。
「からかってないよ」
そのまま、頬をくいと上げられて――唇が、重なった。
「――んッ……ぁ……」
舌が絡む音が、静かな部屋にいやらしく響く。
ちゅ、ちゃぷ……。
口の中を舐め回すみたいな深いキスに、足先まで熱が落ちていく。
「……はぁ……はぁ……」
唇を離した智和の吐息が、耳のすぐ横で震える。
「俺と中村どっちのキスが……好き?」
低い声で問われ、唯の喉が詰まる。
「杉田……お前、そういうこと聞くなよ。ほんと性格悪い」
悠一の声が、少し苛立っている。
「へぇ? そう言う割に――ちゃっかり脱がしてんじゃん」
智和の視線が、悠一の手元をちらりと見やる。
唯「……え?」
視線を落とすと、いつの間にかブラのホックが外され、服が肩からずり落ちていた。
(や……いつの間に……)
頬まで熱くなる。
でも、その恥ずかしさをかき消すみたいに――