第1章 誰にも言えない
ベッドの上、2人は絡まりながら息を整えていた。
悟「……大丈夫?キツくなかった?」
「ううん……すごく、気持ちよかった……。まさか、こんなに優しいなんて……。」
悟「ふふ、見た目で判断されがちだからね。でも俺、本気出すと優しいし、エロいよ?」
その茶化すような声に、めいは照れながらも笑った。
彼女の身体には、まだ彼の余韻が残っていて下腹部はじんわりと疼いたままだった。
「……ねぇ、また……してくれる?」
悟「もちろん。朝まで、何回でも……ね。」
五条はそう囁いて、再び彼女の唇を奪った——。
朝の光は、あまりに静かで冷たかった。
カーテンの隙間から差し込む薄い陽光が、まだ重く眠る空気をゆっくりと撫でていた。
その中で、めいは目を覚ました。
目に映ったのは、白いシーツの中に眠る男の背中。
五条悟の、無防備で穏やかな寝顔。
昨夜のことが、ゆっくりと脳裏に蘇る。
——熱かった身体。
——重なる唇と唇。
——彼の腕に抱かれ声を上げ、何度も果てた自分。
——“またしよう”なんて、彼が笑いながら囁いてくれたこと。
それは間違いなく、甘くて夢のような時間だった。
けれど、目覚めた途端、胸の奥に冷たい何かが広がった。
「……私、何してたの……。」
思わず、喉から漏れた小さな呟き。
薄いシーツを握りしめた指が、かすかに震えていた。
理性を手放して、衝動のままに抱かれた夜。
あの時は、彼の温もりに溺れていた。
でも今は、それがあまりにも現実離れしていて——
まるで“自分じゃない誰か”があの夜を演じていたような気すらした。
「……きっと……こういうの、慣れてる人だよね。」
ぽつり、と言葉が漏れる。
彼は優しかった。
触れ方もキスの仕方も体を求めるときの熱も、どれも優しくて、どこか誠実ですらあった。
だけど、それは彼にとって特別ではないのかもしれない。