第13章 絡まる心と体
たったそれだけの言葉で、女の足は自然と動いていた。
街の灯りから遠ざかり、夜の静けさの中をふたりで歩いていく。
背後に残したものは数えきれない。
けれど手の中に確かにある温もりが、それ以上の意味を持っていた。
逃げるのではない。
彼となら、新しい場所へ行ける。
そう思えた瞬間、胸の奥で長く閉ざされていた扉が音を立てて開いた。
夜風が頬を撫で、涙の跡を乾かしていく。
隣を歩く悟は、変わらぬ笑顔で前を見据えていた。
その横顔を見ながら女は初めて、未来を信じてみたいと思った。
𝑒𝑛𝑑