• テキストサイズ

先生と生徒

第8章 禁じられた熱


男「え、なにそれ。ここまで来て?」

「ごめんなさい、本当に無理。」

男「……はぁ? 面倒くさ。」

腕を振りほどこうとするが、思った以上に力が強い。

酔いと恐怖で足が震え、喉が渇いて声が出ない。

人通りはまばらで、助けを呼ぶにも躊躇してしまう。

――どうしよう。

「……離して、って言ってるでしょ……!」


女のか細い声と、男の絡みつくような下卑た笑い。

男「ちょっとだけで良いからさ、飲み直そ?な?」

「……っ!」

めいは怯えた目で男を睨んでいたが身体は強張り、逃げられずにいた。

悟「おい、手を離せ。……俺の連れなんだけど?」

低い声が響いたのはその時だった。

振り向いた先に、背の高い男が立っていた。

夜でも分かるほどの白い髪、無造作に掛けられたサングラス。

存在感だけで周囲の空気が変わる。

男「な、なんだよ……関係ねぇだろ……っ!」

悟「関係あるよ。だって、これから一緒に過ごす予定なんだし。」

肩を竦めて笑う仕草は軽いのに、声には妙な威圧感がある。

相手の男は舌打ちをして逃げるように去って行った。

残されためいは、ようやく自由になった腕を抱え込む。

鼓動が早すぎて、息が整わない。

悟「大丈夫?」

「……ありがとう、ございます……。」

悟「震えてるね。怖かった?」

「……少し、だけ。」

悟「じゃあ、俺と来る?怖いことはしないよ。たぶん。」

サングラスの奥から笑い声が洩れる。

正直、怖いくらいの雰囲気なのに、その笑顔は妙に軽い。

心臓の鼓動がまだ落ち着かない。

けれど確かに彼が現れてくれなければ、めいはどうなっていたか分からなかった。
/ 127ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp