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先生と生徒

第6章 背徳の鎖


悟「——先生。」

低く、抑えられた声が教室の空気を震わせた。

全員がこちらを見る中、悟はゆっくりと席を立ちめいの机の方へ歩み寄ってくる。

悟「先週、何してたんですか。」

唐突な質問に、息が詰まる。

もちろん、ただの休日ではなかった。

思い出したくないほど熱を帯びた夜——

甚爾の腕の中で溶けるように過ごした時間が、鮮やかに脳裏に蘇る。

「用事があって……。」

悟「用事?」

悟は机の端に手を置き、身をかがめてめいの目を覗き込む。

その距離は教師と生徒の間にあるべきものではなかった。

青い瞳の奥が、わずかに揺らいでいる。

怒りとも、嫉妬ともつかない光で。

悟「……誰といたんです?」

吐息が掛かるほど近くで囁かれ、背筋が凍る。

言葉が出ないめいを見て、悟の口元がゆっくりと歪んだ。

悟「やっぱり、言えないんですね。」

挑発のような響きに、胸の奥がざわつく。

悟は一瞬だけ笑みを見せた後、何事もなかったかのように自分の席へ戻った。

しかし、その背中からも冷たい熱が消えていない。

授業は、息苦しいほど長く感じられた。

時間が進むにつれて、彼の視線が肌に焼き付くように強くなる。

他の生徒が問題を解いている間も悟だけはペンを動かさず、ただめいの一挙一動を見ている。

その視線は、逃げ場のない檻のようだった。

チャイムが鳴り、他の生徒たちが教室を出ていく。

しかし悟は席を立たず机に肘をついて頬杖をつき、こちらを見ている。

青い瞳に射抜かれ、足が自然と止まった。

「……何か、用?」

悟「放課後、ちょっと来てもらって良いですか。」

それは丁寧な依頼ではなく、拒否を許さない命令の響きを帯びていた。

唇に浮かぶ笑みは穏やかだが、その奥に潜む感情は明らかにそれとは違う。

悟の視線はまるで、“逃がさない”と言っているようだった。

——放課後、何をされるんだろう。

胸の奥がざわめき、同時に奇妙な熱が広がっていく。
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