第4章 2人きりで
先「ねぇねぇ、伏黒先生が飲み会に来るなんてレアだよね?」
先2「珍しいですよね~。なんか意外と話しやすいし。」
先「強面だけど案外面倒見、良いしねぇ。めい先生とも、よく一緒に帰ってるって聞いたけど?」
その言葉に、ピクリと肩が跳ねる。
そして、ちらりと目をやると甚爾の横顔がグラス越しに見えた。
無表情。
だが、その耳だけがわずかに赤みを帯びていたように見えた。
「……いえ、そんな頻繁じゃ……。」
ごまかすように笑いながら答えたが、周囲は面白がって追及するような空気になっていく。
先「え~怪しいなぁ〜。付き合ってるんですか?なんてね!」
先2「やだやだ〜伏黒先生、意外と惚れっぽいタイプだったりして~。」
ワイワイと騒ぐ周囲に、めいはどう返せば良いかわからず、ただ笑うしかなかった。
それでも、目の端で見ていた。
——彼が、どう反応するかを。
だが、伏黒甚爾は一言も返さなかった。
笑いにも乗らず、否定も肯定もせず、ただ酒を飲むだけ。
その“無反応”が、逆に彼女の胸にチクリと刺さる。
(……なんで、何も言ってくれないの。)
冗談でも、ひと言否定すれば、こんな風に流せるのに。
それすらしないなんて、まるで——
どうでも良いみたいに。
しばらくして場がひと段落し、誰かがトイレに立った拍子に席が少し動いた。
その流れで、彼女は甚爾の真横に移動する形になった。
無言の時間。
隣から感じる体温と、酒の匂い。
そして何より彼が自分にだけ見せる“無関心”が、やけに重かった。
耐えきれず、めいは小さく口を開いた。
「……今日、どうして来たの? 飲み会。」