• テキストサイズ

先生と生徒

第4章 2人きりで


傑「けどね、めい先生。……先生のその目も、なかなかに危ういですね。」

「……危うい?」

夏油はふっと笑った。

傑「悟に惹かれるのは、誰だって仕方ない。でも……アイツは、誰よりも深く入り込んでくる。先生がそのつもりじゃなくても、気づけば、全部染まってしまう。」

その声は、どこか悲しげだった。

(この人は、悟のことを……。)

傑「先生は“壊れる”タイプじゃない。……でも、壊されることに、気づかないかもしれない。」

めいは無言で彼を見つめた。

「……じゃあ、どうすれば良いんですか?」

傑「悟に、嘘をつかないこと。それだけで良いです。」

夕日がゆっくりと沈みかけていた。

夏油は静かに彼女の横を通り過ぎ、背後から軽く声をかけた。

傑「研究室、あそこを左に曲がったところですよ。……悟、先生のこと待ってると思います。」

その声には、どこか優しさが滲んでいた。

彼女はゆっくりと頷き、歩き出す。

背中に残るのは、静かな視線。

けれどその視線は、どこか悟と同じ温度を持っていた。

(……私、どうなっていくんだろう。)

そんな問いが胸を過ぎる。

けれど、足は止まらなかった。

たとえ“壊される”としても——

今は、もう戻れない。

そして、研究室の前。

彼女はゆっくりと扉の前に立ち、深呼吸をひとつ。

ノックする指先が、小さく震えていた。
/ 127ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp