第2章 秘密の関係
悟「だからって、俺のこと、拒めないんでしょ?」
次の瞬間、唇が重ねられた。
強引ではない。
むしろ優しく、許しを乞うような口づけだった。
だがその柔らかさが、かえって彼女の理性を削っていく。
(なんで、こんな……。)
身体の奥が疼く。
唇がほどけて、わずかに舌先が触れ合うと彼女の背中がびくんと反応した。
「っ……ん……!」
自分の吐息が教室に響くことに気づき慌てて口元を押さえようとしたが、すでに五条の手が彼女の指を優しく解いていた。
悟「……もう、隠さないでよ。……俺のこと、見て。ちゃんと。」
彼の声は酷く真っ直ぐで、どこか寂しげだった。
その瞳に映るのは、ただ1人——
めいだけ。
悟「……君のこと、本気で欲しいって思ってる。……1夜だけなんて、思ってない。」
その告白は、不意打ちだった。
(……ズルい。)
優しくされるのが、いちばん怖い。
冷たく突き放してくれた方が、ずっと楽だったのに。
五条悟は、どこまでも真っ直ぐに彼女の“芯”を揺さぶってくる。
「……もし、私が……ここで応えたら。」
悟「うん。」
「もう、後戻りできないのに。」
悟「最初から、戻るつもりなんてないよ。」
そして彼の手が彼女の手を取り、胸元へと導いた。
確かに熱い鼓動が、彼の胸の奥で鳴っている。
——それは彼女と同じリズムで、高鳴っていた。
めいは背中を壁につけて静かに深呼吸をした。
ここへ来るまで、幾度となく“やめなければ”と思った。
だが五条悟の視線、声そしてあの指先に触れられた瞬間、全ての理性は雲のように散ってしまった。
悟「まだ……緊張してる?」
囁く彼の声は低く甘く、全てを溶かしていく。
「当たり前でしょ……私、教師よ。」
悟「でも今はただの“男と女”でしょ?」
そう言って彼は優しくめいの顎をすくい、瞳を覗き込む。
その目に、嘘や気まぐれは一切なかった。
ただ欲望と情熱、そしてどこか危ういほどの執着が見え隠れしていた。
唇が重なる。