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先生と生徒

第2章 秘密の関係


悟「今日の放課後、時間ある?」

昼休み、職員室で書類整理をしていためいに、いつもの軽い口調で声がかけられた。

振り返ると、五条悟が笑みを浮かべて立っている。

白髪にサングラス、着崩した制服。

初めて会った夜と何も変わらない。

ただ、その微笑みの奥に何かを隠しているような気配がして、めいの心臓は小さく跳ねた。

「……時間なら、ありますけど。」

悟「じゃあ、放課後に2年教室。話したいことがあるんだ。」

「……わかりました。」

努めて自然に返した。

やり取りとして、ごく普通の会話のはずだった。

だが彼が去ったあと手にしていたボールペンを落としていたことに気づき、自分の動揺を知る。

(……話って、何?)

ここ最近は職場にもだいぶ慣れ、日々は穏やかだった。

五条悟とは公的な場では必要最小限のやりとりにとどめ、私的な会話はほぼ交わしていない。

彼も、あの夜のことを無理に持ち出してはこなかった。

だからこそ、それが逆に怖かった。

(まさか……まさかまた……。)

心を押し殺すようにして午後の業務を終え、夕方——。

生徒が帰宅し校舎が静寂に包まれる中、めいは2年教室へと足を踏み入れた。

「……失礼します。」

誰もいない教室。

夕陽が西の窓から差し込み、机や椅子を朱に染めている。

窓際には、五条悟。

両手をポケットに入れたまま彼はその長身を傾け、ふとこちらへ振り向いた。

悟「来てくれてありがと。」

「……何の話ですか?」

彼女はできる限り冷静に尋ねた。

教員としての表情、距離感、立ち振る舞いを崩さないように。

けれど、彼の表情はその堅さをあざ笑うように緩やかだった。
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