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先生と生徒

第2章 秘密の関係


先「めい先生、こちらが今日の担当教室になります。」

「ありがとうございます。早速、指導に入らせていただきます。」

教務主任の案内で廊下を歩きながら、彼女は冷静さを取り繕い続けた。

——仕事をすれば良い。

——五条悟の存在は、無視すれば良い。

感情は、要らない。

教師としての自分に徹しさえすれば、やがて忘れられる。

そう思い込みたかった。

しかし。

昼休み、生徒たちと笑いながら給食を囲む時間。

ふと目を上げたとき、彼がこちらを見ていた。

テーブルの端に座り片手で牛乳を飲みながら、五条悟は真っすぐに彼女を見つめていた。

(やめて……その目で見ないで。)

見つめられるたびに、あの夜のことが蘇る。

舌を這わせられた首筋。

奥まで押し込まれ、絶頂に震えた身体。

恥ずかしい声、乱れた呼吸、全てを彼に見られていたという事実。

(ここでは……私は“あの女”じゃない。教師なの。忘れて……お願い……。)

しかし、彼は忘れる気などさらさらない様子だった。

そして放課後、廊下ですれ違ったとき。

彼は彼女に耳打ちするように呟いた。

悟「……“知らないふり”、上手くなったね。でも、俺は忘れてないよ。君の全部……ね?」

めいは、一瞬で呼吸を詰まらせた。

だが顔には出さなかった。

彼を見ずに微笑すら浮かべたまま、ただ一言。

「……そうですか。では、気をつけて。」

そのまま歩き去る。

背筋を伸ばし、まっすぐ前を向いて。

……でも、その手は震えていた。
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