第13章 絡まる心と体
だから女は小さく頷き、曖昧に微笑んでみせるしかなかった。
彼「そうだろ?素直で良い子だな。」
大きな手で頭を撫でられると、まるで子どものように扱われている気がして心が軋む。
夜になれば、さらにその言葉は重みを増す。
ベッドの上で体を絡め取られるたび、彼は執拗に繰り返した。
彼「なあ、言ってみろよ。俺じゃなきゃダメだって。」
「……。」
唇を噛みしめて黙っていると、頬を軽く叩かれる。
彼「ほら、言えよ。」
強い視線に貫かれ、心が折れる。
彼「……あなたじゃないと、ダメ。」
かすれた声で告げると彼は満足そうに笑みを浮かべ、さらに深く女を抱きしめた。
その瞬間、胸の奥がひどく痛んだ。
本心からの言葉ではないのに嘘を吐かされるたびに、少しずつ自分が削られていく。
けれど――
我慢するしかなかった。
拒んでしまえば、この関係は一気に崩れる。
彼の怒りを買えば、何をされるか分からない。
それでも彼を受け入れていれば、最低限の“繋がり”を保つことはできる。
孤独に耐えるよりは、その方がましだと自分に言い聞かせた。
彼「良い子だな。やっぱりお前は俺のもんだ。」
彼が満足そうに笑い、眠りにつく。
その隣で、女は目を閉じることができずにいた。
天井を見つめながら、静かに涙を流す。
それを彼に気づかれぬよう枕に顔を埋め、声を殺す。
――この先、どうなっていくのだろう。
答えは見えない。
ただ彼の言葉に縛られ虐げられながら、それでも“我慢する”ことを選んでしまう自分が、いちばん恐ろしかった。