第13章 絡まる心と体
体を押し返そうとするが、その腕に捕らわれると力が抜けていった。
彼「ずっと、こうしたかったんだ。」
耳元で吐息をかけながら、彼は低く囁く。
女の背中が壁に押し付けられ、彼の熱が全身を覆う。
強引で荒々しい動作のはずなのに、心の奥底に眠っていた熱が少しずつ溶かし出されていく。
彼「やめないでほしいんだろ?」
彼の手が服の隙間から忍び込み、肌をなぞる。
鳥肌が立ち、逃げ場を失った吐息が漏れる。
「……ちが、う……。」
か細い声で否定する。
だが、それ以上の言葉は出てこない。
彼「ほらな。俺の前じゃ嘘つけない。」
彼の唇が首筋を這い、噛みつくように吸い付く。
女は体を震わせ、必死に声を押し殺した。
ベッドに押し倒されると、背徳と恐怖が混じった甘い痺れが全身に広がっていく。
理性では拒まなければならないと分かっている。
けれど彼に抱きすくめられるたびに心の奥の弱さが露わになり、抗えなくなっていく。
彼「お前が誰と何をしてたかなんて、どうでも良い。」
彼は荒く吐き捨てるように言いながらも、女の体を熱く求め続ける。
彼「結局、最後に抱くのは俺なんだよ。」
女の視界が揺らぐ。
拒絶と快楽がせめぎ合い、涙がにじむ。
「……いや、……やめ……。」
小さく口にしても、その言葉は彼の熱に呑まれていった。
絡みつく体温に、いつしか自分の腕も彼の背中に縋りついていた。
その瞬間、自分がもう抗っていないことに気づき胸に苦い絶望が広がる。
――拒否できない。
それが女に突きつけられた現実だった。
やがて荒々しい行為の中で快楽の波に飲み込まれ、女は自分の意思とは裏腹に声をあげてしまう。
彼の手に、唇に、体に支配されながら心の奥では何度も“違う”と叫んでいるのに。
最後に耳元で囁かれた言葉が、女の胸に深く突き刺さった。
彼「やっぱり、お前は俺のものだ。」
涙が頬を濡らす。
それでも、女はその腕から逃れることができなかった。