第2章 秘密の関係
悟「……マジかよ。」
呆れとも驚きともつかない声が、自然と口から漏れた。
彼女がこちらに視線を向ける。
その一瞬、五条の中で確かに“何か”が爆ぜた。
——無表情。
何の感情も読み取れない彼女の目。
まるで自分のことを知らないかのような、それは徹底した“他人の顔”だった。
夜「それじゃ、今日の日直は……悟、よろしく頼む。」
夜蛾が軽く振ってきた言葉に、五条は慌てて咳払いしながら応じた。
悟「あ、はいはい……。はーい、みんな、静かにー。……って、いやマジか、ほんとに……。」
号令をかけながらも、彼の頭の中は完全に混乱していた。
悟(……どういうこと?あの子が……副担任?冗談、だろ?)
だが、彼女の仕草や雰囲気はまるで“教育者”そのものだった。
全校集会で紹介されるときも他の教員たちにもしっかりと礼儀を尽くし、完璧に振る舞っていた。
まるで——
あの夜の出来事なんて、最初からなかったかのように。
昼休み五条は廊下で彼女を見かけると、すかさず後ろから近づいた。
悟「……ねぇ、ちょっと良い?」
声をかけると、彼女はぴたりと立ち止まった。
そして、ゆっくりと振り返る。
「……何か、御用ですか?五条君。」
その声は丁寧で礼儀正しく、どこか壁を感じさせるものだった。
まるで、初対面の生徒に向けるような距離感。
五条は目を細めて、すぐさまその態度の“異常さ”を察知する。